思春期は、身体の急速な成長とともに精神面も大きく変化します。自我が強く意識され、親から自立しようという思いが強くなるためです。自己の確立が進むなか、若い人は多くの悩みを抱え、心の病気にかかる場合もあります。
若年層に特有といわれる心の病気のひとつが、「思春期うつ病」です。発症率は2~8%に上り、決して珍しくありません。基本的には、成人と同様に身体の不調や自分を否定する感情、また自殺を企図する症状などが多く見られます。
思秋期に、自意識が高まるとともに「思春期妄想症」を発症する人も少なくありません。この病気にかかった人は、自分の目つきや臭いが周りを不快にしていると確信する特徴があります。これらは、「自己視線恐怖」および「自己臭恐怖」と呼ばれる症状です。
若い女性に多く見られる病気のひとつが、「摂食障害」です。大まかには「拒食症」と「過食症」に分けられますが、共通点が多いため完全に別々の病気とは見なされていません。精神的なストレスなどが原因となり、通常の摂食行動を保てなくなります。
上記の病気は思春期に特有といっても、症状を見過ごしていると事態が進行していく恐れがあり放置は好ましくありません。
とくに「思春期うつ病」は、他の病気と合併しているケースが多く、うつ症状が見逃される傾向にあります。各種の治療によって症状が軽くなった後でも成人に達してから再発し、あるいは新たな精神疾患に移行する場合があり、注意が必要です。しっかり経過観察を続けながら、慎重に対応する姿勢が不可欠となります。
一方、「思春期妄想症」は年齢を重ねても症状が改善されるとは限りません。病気が長引く場合、専門医による治療が必要になる可能性があります。また「摂食障害」は、症状が悪化するほど精神的にも肉体的にも負担は大きくなるのです。深刻な状況になれば脳さらには生命に関わる危険が生まれ、入院も避けられません。